だから寝てないといえば寝てないんだけど、でも……なんでこんな恥ずかしいこと言わなくちゃいけないんだろう。
まさか剣馬とこんな会話をしなくちゃいけない日が来るなんて、と気が遠くなりかけた私を、狼くんの腕が力強く支えてくれた。
「恋人同士だから、一緒に寝るのは当たり前だよ」
「お前には聞いてない」
「知ってる? 仁葵ちゃんてすっごくあったかいんだ。ふわふわで、柔らかくて、気持ちいい――」
「黙れ。殺すぞ」
低く冷たい声で言った剣馬は、たしかにその眼光で人を殺してしまいそうだった。
赤ん坊の頃からの付き合いだけど、こんなに怒っている剣馬を見るのははじめてかもしれない。
「仁葵。今日は何があろうとお前を連れて帰るからな」
「え……いやだよ。私、帰らないっていったよね」
「お前の意見は聞いてない。絶対に連れて帰る。これは決定事項だ」


