「でもおじいちゃんは、やると言ったら絶対にやるんだよね……」
その決断力と実行力で、花岡グループを成長させてきた人だ。
まともに戦って勝てる相手じゃないことは、孫の私はよく知っている。
いままでだって、習い事や行動範囲、門限なんかも全部おじいちゃんの決めた通りにさせられてきた。
このままいったら、本当に婚約、結婚、そして出産時期まで決められてしまいそうで、想像しただけで体が震える。
「これはもう、家出するしかない」
そうと決めたら、善は急げだ。
私は大きめのボストンバッグに制服と学校の道具、それから下着の替えと充電器を詰めこんで、こっそり家を抜け出した。
ハウスキーパーや運転士に見つからないよう、家の裏手の庭木から、塀を越えてアスファルトへと飛び降りる。
自慢じゃないけど、頭の出来がいまいちだった分、運動神経はそこそこいいのだ。


