結婚するのがイヤで家出したらクラスの男子と同棲することになった話【11/16番外編2追加】


でも、そっか。この部屋には私以外誰も泊まったことがないんだ。
その事実自体が特別なことのようで、なぜか胸がきゅんとした。

身支度をしてマンションを出ると、狼くんが「はい」と左手を差し出してきた。
その手の平には特に何も乗っていない。

どういう意味だろうと黙ってじっと見ていると「早く握ってくれないと恥ずかしいんだけど」と言われ、ようやく気がついた。
そうか、恋人のフリをするんだから、手を繋ごうってことね。


「じゃあ……」


おそるおそる握った手は、やっぱりひんやりしている。
でも握り返してくるその手は、とても優しい。

狼くんはいつも通り、ちょっと眠そうな顔の無表情だけど、私は照れくさくてどんな顔をしていいのかわからなくなった。
どこで狼くんのファンが見るかわからないんだから、もっと自然に見えるようにしないといけないのに、うまくできない。