『仁葵。いい加減にしろって。こんなことしても、新造さまを余計に怒らせるだけだ。そんなのお前だってわかってるだろ?』


わかってるよ、そんなこと。
でも剣馬には言ってほしくなかった。

おじいちゃんの犬でも、私の幼なじみでもあるんだから、ちょっとくらい私の気持ちを考えてくれてもいいのに。
いつもいつも、事あるごとに新造さまは、新造さまがって、おじいちゃんのことばっかり優先して……。


『とにかく帰って、素直に謝れ。そのあとのことは――』

「絶対帰らないんだから! 剣馬のバカ!」


スマホに向かって叫んで、電源を落とした。

ひどい。どうして私がおじいちゃんに謝らなくちゃいけないの。
おじいちゃんが私に謝るならわかるけど、私が謝る理由なんてひとつもない。