『また新造さまとのケンカが原因だろ? 子どもみたいなことしてんじゃねぇよ』
「子どもじゃないよ! だって……おじいちゃん、お見合いしろって言うから」
『は……? 見合い?』
「お見合いして、婚約して、卒業したら結婚だって。そんなの受け入れられるわけないでしょ! だから家出したの!」
電話の向こうで、剣馬が盛大なため息をつくのが聞こえてきた。
やっぱりあきれてる。
剣馬はおじいちゃんの犬だから、そんなことで家出かよ、とか思ってるんだろう。
花岡家に生まれた以上、政略結婚だって覚悟して当たり前だ、とか言われそうで嫌だ。
『わかったから、とりあえず帰ってこい。どこにいる?』
「私、帰らないよ。おじいちゃんがお見合いをあきらめてくれるまで帰らない」


