と、バカな妄想までしてしまうくらい、俺はショックを受けていたのだ。
そんなこと出来るはずがないということも、わかっていたのに。
俺はあくまで三船の人間だ。
花岡家に仕え、尽くす影の存在。
仁葵の隣りなんていう明るい表には出られない。
そういう性質なのだ。
まあ結局、飛鳥井に婚約者がいるというのは誤解で、逆にあのナンパ野郎はナンパ野郎のくせに長年仁葵を想い続けていたことがわかった。
その真実を知ったとき、もういいかと思った。
一途なナンパ野郎に、仁葵を預けてやってもいいか、と。
「……だからと言って、あいつが気に入らないのは変わらないけどな」
仁葵のふわふわした髪を撫でながら、低く呟く。
仁葵の婚約者としては認めてやったが、おそらく一生飛鳥井を好きになれることはないだろう。
俺の仁葵を奪った男として、生涯恨み続ける所存である。