申し訳なくて下げた頭を上げられずにいると、辰男さんが小さくふき出した。
「いや、すまないね。本当に若い頃から変わっていないなと思うとおかしくて。どうか頭を上げてください、仁葵さん」
「はい……。あの、祖父は昔からああなんですか?」
「そうとも。分が悪くなると、すぐにああして怒って見せて、逃げ出すんだ。そして次に会ったときには何事もなかったように振舞う」
「子どもですね……」
「そういうわかりやすい所が僕は好きですよ」
なんて出来た人だろうか。
辰男さんみたいな人だからこそ、おじいちゃんと友だちでいてくれたんだろうなと思う。
人を従えるのは得意でも、人と対等に接するのは苦手なおじいちゃんにとって、辰男さんは得難い人だったにちがいない。


