私を助けてくれたときの、厳しい顔。
ルポを可愛がるときの、慈愛に満ちた顔。
いつもより少し幼く見える、安らかな寝顔。
私をエスコートしてくれる、凛とした横顔。
抱き着いてくるときの、警戒を解いた甘え顔。
七色の光に照らされた、きれいでかっこいいキスの顔。
まだこんなに狼くんのことを想っているのに、私は――。
「仁葵。何をしている。早く入ってきなさい」
「……はい」
おじいちゃんに呼ばれ、ぐっと目をつむる。
そして自分に改めて強く言い聞かせた。
私はもう失恋したんだ、と。
いまはムリでも、いずれ狼くんのことも過去の恋としてゆっくりと忘れていく。
つらいのはいまだけで、心に蓋をしていればいい。
だから大丈夫。
顔を上げ、一歩踏み出した。


