「行くぞ仁葵。先方はもう到着しとる」

「はい……」


先に歩き出したおじいちゃんの後に続いてホテルに入る。
お見合いはここに入っている日本庭園が見渡せる料亭で行われるらしい。

それに合わせて私も華やかな空色の訪問着を着せられた。
お見合いにお着物って、いつの時代だ。

ワンピースでもいいんじゃない?と言ったけど、おじいちゃんに無言に睨まれたのだ。
料亭でやるならまあ仕方ないけど、お見合いにお着物って、なんだかすごく気合が入ってるみたいで嫌なんだよなあ。

このお見合いに積極的な姿勢で臨んでます!って思われたらどうしよう。
そんなことを考えるのは自意識過剰だろうか。

その気持ちが顔に出ていたのか、剣馬に「大丈夫か」と心配されてしまった。