「また家出されたらたまったもんじゃないからな」

苦笑しながら、剣馬が私の頭をなでる。
大きな手は温かくて、狼くんの冷たい手とのちがいを感じ、胸が勝手に切なくなった。


「しばらくここにいるか?」

「でもそれじゃあ剣馬は……」


あまりにも剣馬が優しすぎて、不安になってきた。
あんなに家に帰れとうるさかったのに、どうしちゃったんだろう。

おじいちゃん最優先の剣馬はどこに?
仕事放棄だって、怒られたりしない?

色々考えてしまい黙りこんでいると、むにっと頬をつままれた。


「いひゃい……」

「何だよ、新造さまが心配なのか? 大丈夫だ。俺が上手く伝えておくから」

「剣馬が? どうして」

「どうしてって……」