「これでわかってくれたかしら? あなたはいま、婚約者のいる男性の部屋に上がりこみ、我が物顔でくつろいでる、厚かましくて恥知らずなことをしているって」

「……すみません。いますぐ出ていきます」


私は顔をうつむけたまま、家出したときに持ってきていた少ない荷物を、来たときと同じようにボストンバッグに詰めこんでいった。

一緒に買い物をしたものは、全部置いていくことにした。
脱いだルームウェアも、迷ったけれど置いていこうと決めて丁寧に畳む。
きっとあとで、美鳥さんがまとめて捨てるんだろう。

荷物が少なすぎて、あっという間に片づけが済んでしまった。
いつの間にかルポがそばにいて、甘えるように鳴きながら、私の体にすりっとなついてくる。

寂しさで胸がいっぱいになって、温かなルポの体を抱きしめた。