自分ではずっと、しっかりしてるって思っていたけど、大人たちのには根拠のない自信だとあきれられていたんだろうか。
私が黙りこむと、飛鳥井くんはまたひとつため息をついて私のバッグを手にとった。
「家まで送るよ」
行こう、と歩き出そうとした彼の腕を、反射的につかんで「だめ!」と叫んだ。
自分がバカな子どもだということがわかっても、どうしても素直に家に帰る気にはなれなかった。
だって、帰るということは、おじいちゃんの横暴に屈するということと同じだ。
おじいちゃんの言う通りにお見合いをして、婚約をして、卒業と同時に結婚しなくちゃいけなくなる。
それだけは、絶対にイヤだった。
「私は帰らない。絶対に」
「あのね。自分がさっきどんな危険な状況だったか、まだわからないの?」
「もうわかったよ! でも、だめなの。帰れないの……」


