逃げずに確認しよう。
狼くんならきっと、ごまかさず話してくれるはずだ。
でもちょうどそのとき、狼くんのスマホに電話がかかってきた。
「はい。……わかりました。俺も向かいます」
手短に通話を終えると、狼くんが申し訳なさそうに私を見た。
「ごめん仁葵ちゃん。そろそろ行くね」
「そっか……。気をつけてね」
「夕食もひとりにしちゃうけど。大丈夫?」
「大丈夫だよ! そのためにテイクアウトしてきたんだし。おばあさんの退院祝いなんでしょう?」
狼くんのおばあさんは、先週まで体調を崩し入院していたらしい。
その回復をお祝いする席なんだから、孫の狼くんは絶対参加しないと。
でも狼くんはまだ迷っているような顔をしていた。
「……仁葵ちゃんも、行く?」
「え?」
「準備して、一緒に行く? 少しくらい遅れても問題ないよ」


