おじいちゃん最優先な頭の固いところと、誠実さは関係ないし。
少なくとも剣馬は、私を騙そうとするようなひどい奴じゃない。
「と、とにかく。狼くんがその美鳥っていう相手と電話してたのは本当なの」
「もし飛鳥井くんが、婚約者がいる身でありながら仁葵ちゃんとの同棲を提案したのだとしたら……」
「だとしたら……?」
「私、何をするかわかりません」
うふふ、と上品に微笑む寧々子ちゃんの背後に、黒いオーラが見えた気がした。
気のせい、だよね?
ゾクゾクと悪寒が走り、私は自分の腕をさすりながら乾いた笑いを浮かべた。
「寧々子ちゃんがそんな冗談言うなんて珍しい~」
「あら。冗談ではありませんもの」
「……あはは。本当におかしいんだから~!」
やめよう。このことについて言及するのはもう終わりにしよう。


