飛鳥井くんの勘ちがいじゃ? という私の考えを読んだかのように、飛鳥井くんは「どう考えてもそうだよ」と言い切った。
「その証拠に、あの男、花岡さんの苗字すら口にしなかったんじゃない?」
「苗字? ……言われてみれば」
「父親の仕事関係者なら言えるはずでしょ。でもあの男は君のことなんてまったく知らないんだから、言えるはずないんだよ」
「そ、そうだったんだ。全然演技してるようには見えなかったから、わからなかった……」
「普通は怪しいって気付くものだと思うけど。花岡さんて、かなり世間知らずなんだね」
淡々とした声で、思い切り急所を突かれた。
家を出る前にも、おじいちゃんに「世間知らず」と言われたことを思い出して、唇を噛む。
悔しいけど、私って本当に世間知らずだったのかもしれない。


