「もしかして、いま自分が危ない目に遭いかけてたこと、わかってない?」

「え? 危ない目って、私が?」


飛鳥井くんは長いため息をついて、肩を落とした。


「花岡さん、さっきの男に騙されてたんだよ」

「騙されてた? え?」

「あの男は花岡さんのことなんて知らないし、もちろん花岡さんのお父さんの知り合いでもなかったってこと。知り合いのふりして君をホテルかどこかに連れこもうとしたんだよ」

「ええ!? そ、そうだったの……?」


ものすごく驚いて、男の人が走り去っていった方向を見た。
もう彼の姿は人混みの中に消えていたけれど、そうせずにはいられなかった。


「でも、そんな悪い人には見えなかったけど……」