手荷物検査を終えてパークの中に入ると、もうそこは絵本や映画、物語の世界だった。
びっくりするくらいの人の多さだけど、そんなことはどうでもよくなるくらい胸が躍るような世界観が広がっている。
異国風の建造物が立ち並び、人垣の中心には有名なキャラクターがいて、キラキラした音楽が流れ、いまにも走り出したくなる。
童心に帰るって、こういうことを言うのかなあ。
「狼くん! まずはどこに行く? パンフレットもらう?」
「パンフレットもらって、パスケースでも買おうか。仁葵ちゃんは猫のね」
「えー? じゃあ狼くんは犬のだね。それか、オオカミのやつってあるかなあ」
うきうきしていたら、近くでフラッシュがたかれたのがわかった。
知らない女の子たちが、狼くんに向かってカメラやスマホを向けている。
狼くんのファンか、ストーカー?
「やばっ。かっこいー」
「芸能人?」
あ、ちがう。ただ狼くんのかっこよさに見惚れただけの人みたいだ。
本当に勝手に写真を撮られちゃうんだな。
私は慌てて狼くんをひっぱり、近くのショップに逃げこんだ。


