狼くんにエスコートされ、迎えの車に乗りこむ。
でもいつもならすぐに狼くんが隣に座るのに、今日はちがった。
「じゃあ、行ってください」
「えっ。ろ、狼くんは?」
「俺は別の車に乗るから」
別の車って、別々に帰るってこと?
いったいどうして。私、何か嫌われるようなことでもしちゃったのかな。
不安になる私の頭を、狼くんが優しく撫でた。
「親公認になったことだし、デートしようって言ったでしょ」
「デート? これから?」
「そ。せっかくだから、待ち合わせも味わっておきたいなと思って」
「現地集合ってこと?」
「……その言い方だとなんか色気がないな。まあいいや。行先は秘密。着いたらそこで待ってて。俺もすぐ行くから」
そう言うと、狼くんは車を離れ、軽く手を振る。
ゆっくりと車が発進して、小さくなっていく彼を私は窓から見ていた。


