無責任? 花岡の子じゃなければ、と思うことは無責任になるの?
狼くんの言葉に傷ついて、何も言えなくなる。
「人間に生まれた瞬間から、家柄でも容姿でも能力でも何でも不平等だよ。それは人類みんな平等だ」
「……不平等が、平等?」
「そう。だからそういう理不尽さを受け入れて、その上で自分ってものを確立していけたらいいよね」
狼くんの言っていることは少し難しくて、完全に自分の中で消化するまでは時間がかかりそうだった。
でも「不平等が平等」という言葉は、私の胸に強く刻みついた。
もう少しで何か、つかめそうな気がする。
「狼くんはすごいね」
「俺は別にすごくないよ。でも、仁葵ちゃんにすごいって言ってもらえる人間にはなりたいかな」
「じゃあもうなってるじゃん」
私の言葉に、狼くんはまだまだ、と少し遠くを見るように呟いた。


