ほんとはかなりルポとの生活に魅了されて決めたんだけど。
でもそれだけが理由じゃないというのは嘘じゃないし。
「くそ……ふざけるなよ」
「剣馬……?」
「悪いけど」
なんだか剣馬の様子がおかしくて、どうしたのと声をかけようとしたけど、それを遮るように狼くんが私を後ろへと追いやった。
剣馬の姿を見せたくないとでもいうように、広い背中が私の視界をふさぐ。
「三船の出番はないよ。仁葵ちゃんの守るのは、彼氏である俺の役目だから」
そのまま狼くんに手を引かれ、車に乗りこんだ私たち。
走り出した車を、剣馬はその場で立ち尽くし、ずっと険しい顔で見送っていた。


