剣馬は感情を押し殺すような低い声で言ったけど、なぜかそのとき私には、拗ねているように聞こえた。
なんだか小さい頃の、まだ可愛かった剣馬がだぶって見えたのだ。
「……で、でも。剣馬の家にはルポもいないし」
「ルポ?」
「狼くんが飼ってる猫。もう、めちゃくちゃ可愛いの! 最高の癒しなの!」
「お前……まさか猫につられて決めたのか。ずっと猫飼いたがってたもんなあ?」
しまった、と口を押えたけどもう遅い。
横で狼くんが手で目を覆うのがわかった。
うう、ごめんなさい。
「猫くらい、俺も飼ってやるからうちに来い」
「ね、猫は好きだけど! 猫が好きだから狼くんと同棲するわけじゃないもん!」


