顔を上げると、スーツの男の人よりも高い位置に知っている顔があって驚いた。


「え……飛鳥井(あすかい)くん?」


同じ鳳学園に通うクラスメイトの男の子、飛鳥井(ろう)くんだった。
なぜか少し怒っているような、あきれているような目で私を見下ろしている。

飛鳥井くんは、スーツの男の人を見て「知り合い?」と私に聞いた。


「えっと……父の、仕事関係の人?」

「彼女のお父さんと仕事でご一緒したことがあ――」

「おじさんには聞いてないよ」

「お、おじさん……」


男の人の話を遮り、飛鳥井くんが私を守るように前に立った。
広い背中を見つめながら、頭の中が疑問符でいっぱいになる。

飛鳥井くんがどうしてここに?
この状況はなに?


「ねぇ。この人、本当に知り合い?」

「え? ええと、たぶん? 私は失礼なことに覚えてないんだけど……」

「それ、覚えてないんじゃなくて、まったく知らないとかじゃないの?」