あのときは絶対にお母さんは味方になってはくれないだろうって、相談しようともしなかったし。
でも、何かひとことくらい伝えればよかった。
そうは思うけど、家出したこと自体に後悔はないし、いまさら帰るつもりもない。
「ごめんね、お母さん。でも私、本気だから」
「お見合いが嫌という気持ちがわからないわけじゃないのよ。でもそれ以上に心配だわ。あれからいったいどこにいたの? 本間さんのところじゃないでしょう?」
やっぱり寧々子ちゃんのところには行っていないことは知られていたんだ。
でも正直に話して、連れ戻されても困るし……どうしよう。
「俺のところです」
当然のようについて来てくれた狼くんが、一歩前に出てそう言った。


