男の人は「もしかして、家出?」と心配そうに聞いてきた。
「あの! 大変お恥ずかしい話ですが、父には知らせないでいただけませんか」
「でも、家出はまずいよ。こんなところに君みたいな子がひとりでいたら、危ない輩に何をされるか」
「でも私、行くところがなくて……」
正直に言った私の肩を、男の人の手が温かく包んだ。
そのまま労わるように優しく撫でられる。
「ここには置いていけないし、僕が泊まる部屋を見つけてあげるよ」
「えっ? ほ、本当ですか? あ、でも、父のお知り合いに面倒をかけるわけには……」
「気にしないで。僕が勝手に心配して、勝手に助けるだけだから。じゃあ行こうか」
手を差し出され、迷いながらもその手を取ろうとした。
でも触れる直前、誰かに突然手首をつかまれ止められてしまった。
「何やってんの」


