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国語科職員室までの道のりは長い。
シンとした廊下に、私たちの足音だけが響く。
晶は計算してか、たまたまか、私の手に数冊のノートだけを残して前を歩いている。
多分、わざとだろうな。
歩くたびに跳ねる、色素の薄い髪をぼんやりと眺めていると、不意に前方から声がかかった。
「お前さっき、俺から逃げようとした?」
先程とは打って変わってひどく冷たい声に、喉がカラカラに乾いていくのがわかる。
ゴクリと唾を飲み込んで、震える声を吐き出す。
「そんな、こと…」
「は?」
晶が振り返る。
威圧的な声とつり目がちな瞳に貫かれて、口をつぐんだ。
胸の辺りが、絞られたように痛い。
「…ごめん」
「………遅せぇよ、もっと速く歩けねーの」
「……ごめん。」
視線を落として、晶のことは絶対見ないように、と横に並んだ。
目があったら、何を言われるかわからない。
──これが、晶の本当の姿。
私だけに見せる、威圧的な顔。



