「待って、更紗。」
「…っ!」
ひょい、とノートの山が取り上げられて、それと同時にやたら端正な顔が目前に広がる。
心臓がドキドキと音を立てて、指先が冷えていくのがわかった。
「あ、晶…」
「そんな重いもの、1人で持って行く気?幼馴染なんだから、もっと俺を頼ってよ」
ね?と向けられた微笑みになんて返したらいいのか分からなくて、彷徨わせた視線を床に落とす。
「ご、ごめん…」
そう呟くのにかぶせるように、教室の方から声がした。
「ねぇ晶〜!カラオケ行かないの〜?!」
「んー…ごめん。今日は更紗と帰りたいから」
苦笑する晶に、「え〜!またぁ?」なんてクラスメイトの女の子達は不満気な声を上げる。
その視線が私に突き刺さっているように感じられて、びくりと身をすくめた。
…息が苦しい。
「んー…じゃあ今度行こ。また誘ってよ」
「もー、絶対だからね!みんな晶が来るの楽しみにしてるんだから」
「ごめんね、また今度ね」
晶の返事に納得したのか、女の子たちは渋々ながらも鞄を持って昇降口へと通り過ぎて行った。
「…幼馴染だからって、調子のってんじゃねーぞ」
そんな呟きを、私に残して。



