ぽかんと更紗の口が開く。
本当に何を言っているのかわからないって顔だった。
「ごめん更紗。俺、本当にずっと更紗に酷いことしてきた。
謝って済むようなことじゃないって、わかってる。だけど謝らせてほしいんだ」
本当にごめん、と頭を下げる。
沈黙が続いたあと、上から困惑したように「えっ、えっと、あの」と声が降る。
顔を上げて、と戸惑った声で言われて頭を上げると、ただでさえ大きい目を更に見開いた更紗と目があった。
長いまつ毛が忙しなく動いている。
「ど、どうして、突然?」
「…俺がやってきたことが間違いだって、やっと気づいたから」
更紗はより一層けげんな顔をして、頭に『?』を浮かべている。
「…俺は、中1の頃までは更紗のこと、普通に好きだったんだ。ちゃんと大切にしたいって思ってた。
だけど、ある時…、更紗の怯えた顔に優越感を覚える自分がいることに気づいて。
これが俺の気持ちの伝え方なんだって思い込んで、散々なことした。
でも昨日、更紗が永塚さんに『好きな人ができた』って言ってたのを聞いて…
それで、俺がやってること全部間違いだったんだって思い出せたんだ。
俺がやってたことは独りよがりで更紗のこと何も考えてなくて、傷つけてるって。
だから────…」
「って、ちょ、ちょっと待って…!?」
俺の話を遮って、更紗が動揺の声を上げる。
「そ、それじゃあまるで、晶が私のこと……」
かああ、と更紗の顔が赤に染まるのが見えた。
それがあまりにもかわいくて、思わず頬がゆるむ。
ああ、やっぱり好きだなあ。
たとえ理想の未来がどんなに儚いものだとしても。
俺のことを見てもらえる可能性が限りなく0に近いとしても。
それでもやっぱり……
バクバクとうるさかった心臓の音は、今ではもうすっかり穏やかだ。
真っ直ぐにその大きな瞳を見つめる。
「更紗……
好きだ。」



