夢に堕ちて、3秒。



ぽかんと更紗の口が開く。
本当に何を言っているのかわからないって顔だった。


「ごめん更紗。俺、本当にずっと更紗に酷いことしてきた。
謝って済むようなことじゃないって、わかってる。だけど謝らせてほしいんだ」


本当にごめん、と頭を下げる。

沈黙が続いたあと、上から困惑したように「えっ、えっと、あの」と声が降る。


顔を上げて、と戸惑った声で言われて頭を上げると、ただでさえ大きい目を更に見開いた更紗と目があった。

長いまつ毛が忙しなく動いている。


「ど、どうして、突然?」

「…俺がやってきたことが間違いだって、やっと気づいたから」


更紗はより一層けげんな顔をして、頭に『?』を浮かべている。



「…俺は、中1の頃までは更紗のこと、普通に好きだったんだ。ちゃんと大切にしたいって思ってた。
だけど、ある時…、更紗の怯えた顔に優越感を覚える自分がいることに気づいて。
これが俺の気持ちの伝え方なんだって思い込んで、散々なことした。

でも昨日、更紗が永塚さんに『好きな人ができた』って言ってたのを聞いて…
それで、俺がやってること全部間違いだったんだって思い出せたんだ。

俺がやってたことは独りよがりで更紗のこと何も考えてなくて、傷つけてるって。

だから────…」


「って、ちょ、ちょっと待って…!?」


俺の話を遮って、更紗が動揺の声を上げる。

「そ、それじゃあまるで、晶が私のこと……」



かああ、と更紗の顔が赤に染まるのが見えた。

それがあまりにもかわいくて、思わず頬がゆるむ。



ああ、やっぱり好きだなあ。


たとえ理想の未来がどんなに儚いものだとしても。

俺のことを見てもらえる可能性が限りなく0に近いとしても。


それでもやっぱり……



バクバクとうるさかった心臓の音は、今ではもうすっかり穏やかだ。

真っ直ぐにその大きな瞳を見つめる。



「更紗……




好きだ。」