「っ、!?」
思わず額を押さえて彼を見やると、にこにこと微笑んでいた。
今…今!!
口をぱくぱくと開けるけど、肝心の言葉が出てこない。
「あはは。嬉しくて、つい」
ついって、そんな簡単に…っ
頬が熱い。
鏡を見なくたって今の自分の顔色がわかる。
…でも、嫌じゃない。
恥ずかしくて、胸の奥がくすぐったいような、叫びたい気持ちではあるけれど。
「…夢みたい。黒羽さんと同じ気持ちだなんて」
ぽつりとこぼすと、彼はまた笑った。
「夢じゃないよ。夢だけど…夢じゃない。
この気持ちは真実で、現実だよ」
その言葉に泣き出したいような、それでも安心した気持ちになって、私は笑みをこぼした。
**
「…………更紗、更紗!」
「……あれ、綾羽」
パチリと目を開ける。
あれ、どうして?綾羽がいる。
ぼけっとした顔であたりを見回してみると、お弁当を広げるクラスメイトと目が合った。
「もう、また寝てたの?もうお昼だよ」
あたし達もはやく食べよー、なんて綾羽は私の前の席に腰かける。
……現実、だ。
今日のお弁当はハンバーグ〜、なんて変な歌を歌う綾羽を盗み見る。
『更紗はいないの?好きな人』
いつかに聞いた誰かからの質問が、ふと頭をよぎって。
「…綾羽」
蓋を開けて「わ〜!」と目を輝かせていた綾羽が、こちらを向く。
「うん?どした?」
「綾羽、私…私ね」
伝えておきたい、この気持ち。綾羽にだけは。
「私……好きな人ができたよ」