「私なら退屈すぎて、おかしくなっちゃいそうだよ」
彼岸花を一輪、掬い上げる。
赤い花弁がゆらゆら揺れるのを見ながら、つぶやいた。
「そう?」
そんなことないけどなぁ、と付け加えて、彼も彼岸花に目を落とす。
「まぁ、俺にとっては更紗がいて、俺がいるこの空間が現実だから」
暇だとかは、考えなかったよ。
そう言って黒羽さんは笑って、「それに」と続ける。
「更紗がいれば他に何もいらないし。更紗がいれば、俺は幸せだ」
「……っ、また、そうやって適当なこと言って」
「適当じゃないよ」
ふい、と顔を背けようとするけれど、真剣な声音に目が逸らせなくなる。
「ねえ、更紗。俺は更紗のことが好きだよ。大好きだから、隣にいたい。更紗がいれば、それだけでいい」
「っ、」
それは、本当…?
だって私はまだ、彼のことが好きだって気づいたばかりで。
そんなの、都合のいい夢だと思ってしまいそう。
「……う、うそ」
ぽつりとこぼれた言葉は、あまりにもかわいげのないもので。
でも、だって、信じられない。
そんな、唐突な。
「嘘じゃないよ」
黒羽さんは微笑んで、私を引き寄せた。
腕の触れた箇所が、変に熱くて。
「俺は更紗と初めて会った時、『どうして更紗のことを知ってると思う?』って訊いたけど」
「あぁ…」
たしかに、そんなこともあったような。
でもそれは、私の夢の中だからだって…。
「本当に、更紗の夢の中だからだと思う?」



