夢に堕ちて、3秒。




「私なら退屈すぎて、おかしくなっちゃいそうだよ」

彼岸花を一輪、掬い上げる。
赤い花弁がゆらゆら揺れるのを見ながら、つぶやいた。


「そう?」

そんなことないけどなぁ、と付け加えて、彼も彼岸花に目を落とす。


「まぁ、俺にとっては更紗がいて、俺がいるこの空間が現実だから」

暇だとかは、考えなかったよ。


そう言って黒羽さんは笑って、「それに」と続ける。


「更紗がいれば他に何もいらないし。更紗がいれば、俺は幸せだ」

「……っ、また、そうやって適当なこと言って」

「適当じゃないよ」


ふい、と顔を背けようとするけれど、真剣な声音に目が逸らせなくなる。



「ねえ、更紗。俺は更紗のことが好きだよ。大好きだから、隣にいたい。更紗がいれば、それだけでいい」

「っ、」


それは、本当…?


だって私はまだ、彼のことが好きだって気づいたばかりで。

そんなの、都合のいい夢だと思ってしまいそう。


「……う、うそ」

ぽつりとこぼれた言葉は、あまりにもかわいげのないもので。

でも、だって、信じられない。

そんな、唐突な。



「嘘じゃないよ」


黒羽さんは微笑んで、私を引き寄せた。


腕の触れた箇所が、変に熱くて。


「俺は更紗と初めて会った時、『どうして更紗のことを知ってると思う?』って訊いたけど」

「あぁ…」


たしかに、そんなこともあったような。

でもそれは、私の夢の中だからだって…。




「本当に、更紗の夢の中だからだと思う?」