「呼んだ?」
ぽかん、と口を開ける。
「え?」
黒羽さんの声がする。
……目の前に、黒羽さんがいる。
ぱちぱちと瞬きをしてみるけど、消えるわけもなく。
そんな私の様子を見て、彼はくすくすと笑った。
「いやだな、まだ寝ぼけてるの?」
ぐるりと、周囲を見渡す。
いつのまにか教室だったはずの場所は、あの彼岸花の空間へと変わっていた。
「おはよう、更紗」
柔らかな笑みに、胸の奥が甘く鳴く。
…黒羽さんだ。黒羽さんが、いる。
「おはよう、黒羽さん」
どうしようもなく嬉しくて、思わず笑みがこぼれた。
「でも、さっきまで教室にいたはずなのに…」
首を傾げると、黒羽さんはあっけらかんと言い放つ。
「更紗が呼んだから、会いにきただけだよ」
「呼んだ…って」
「会いたいって、思ってくれたでしょう」
にこ、と細められる瞳。
「ちが……っ」
慌てて否定しかけて、やめた。
……ちがく、ないもん。
熱くなった頬を、手で覆って隠した。



