夢に堕ちて、3秒。




「呼んだ?」


ぽかん、と口を開ける。

「え?」


黒羽さんの声がする。


……目の前に、黒羽さんがいる。


ぱちぱちと瞬きをしてみるけど、消えるわけもなく。

そんな私の様子を見て、彼はくすくすと笑った。


「いやだな、まだ寝ぼけてるの?」


ぐるりと、周囲を見渡す。

いつのまにか教室だったはずの場所は、あの彼岸花の空間へと変わっていた。


「おはよう、更紗」


柔らかな笑みに、胸の奥が甘く鳴く。


…黒羽さんだ。黒羽さんが、いる。


「おはよう、黒羽さん」


どうしようもなく嬉しくて、思わず笑みがこぼれた。



「でも、さっきまで教室にいたはずなのに…」

首を傾げると、黒羽さんはあっけらかんと言い放つ。


「更紗が呼んだから、会いにきただけだよ」

「呼んだ…って」

「会いたいって、思ってくれたでしょう」


にこ、と細められる瞳。


「ちが……っ」


慌てて否定しかけて、やめた。

……ちがく、ないもん。


熱くなった頬を、手で覆って隠した。