あ、と思った時にはもう遅くて。
どうしよう。遅刻までした上に、こんな風な態度をとったら、また帰り道に何か言われるかも。
恐る恐る顔を上げる。
「……え?」
また、晶と視線が合う。
だけどそこにあったのは、私が想像してたあの鋭いつり目じゃなくて、どこか傷ついたような、不安定な瞳だった。
その瞳が私を捉えて、大きく開かれる。
だけど、そのままフイと逸らされてしまった。
「…なんで晶が、そんな顔するの」
合わなくなった視線の先に向けて、ぽつりとこぼす。
私のこと、嫌いなくせに。
私に向かって散々、ひどいことをしたくせに。
なんでそんな、悲しそうな顔をするの。
胸の中がムカムカして、どうにもならない。
…黒羽さんに、会いたいな。
彼の瞳を見ていると、心が凪いでいくから。
会って、それからまた、彼の話が聞きたい。
あの水面のような瞳を思い出して、胸が苦しくなった。
毎日一緒にいるのに。
なんなら、彼のせいで寝坊までしたのに。
もう会いたいよ。



