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「あ、更紗やっと来た!も〜、また遅刻?」
「ご、ごめん綾羽…。うっかり寝坊しちゃって」
「これで3日目だよ〜?!気をつけなね!」
「ごめん…」
2限の先生が出て行ったのを見計らって、そそくさと教室に駆け込む。
流石に3日連続で遅刻なんて、良くないとわかってはいるんだけど。
あの日から、黒羽さんに会うたびに、彼は私に物語を話して聞かせてくれるようになった。
黒羽さんの話は聞き入るほどに心奪われる話ばかりで。
駆け落ちした夫婦の話、天使になりたい人の話、死神と少女の恋愛の話なんていうのもあった。
とにかく、彼の話はずっと聞いていたいと思えるくらいに綺麗で。
最近は学校に行くのも忘れて夢に溺れてしまっている。
…よくない。よくないってわかってるけど。
でも、だって、遅刻をすると朝、晶に会わずに済む。
朝1人で歩く通学路は、何にも縛られなくて息ができた。
だから、本当はこうやって、ずっと遅刻していたいくらいなのに。
なんなら、学校にだって──……
そこまで考えて、ブンブンと首を振る。
それは、甘えだよ。
学校に行きたくないなんて、そんな。小さい子でもないんだから。
ふぅ、と息をひとつ吐く。
そして、机にカバンを下ろした時、痛いくらいの視線を感じて振り返ると、バチリと晶と目が合った。
どき、と心臓が跳ねる。
そのまま何か言いたげに晶が口を開いた瞬間、怖くなって視線を逸らしてしまった。



