ひょい、と覗き込むと、頬に朱を差した黒羽さんと目が合った。
…照れてる。黒羽さんが。
ぽかんと口を開けて固まる私に、黒羽さんは「あ〜もう…」とこぼした。
そして、私の髪をあの白い手がするりと滑る。
「せっかく我慢してたのに…、そんなにかわいいことばっか、言わないで」
「なっ…か、かわ…!?」
かわいい?私が!?
突然のセリフにびっくりしてしまって、目がうろうろと泳ぐ。
どうしよう。絶対今、黒羽さんよりも顔が赤い。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、更に黒羽さんは距離を詰めてきた。
する、と彼の指先から長い黒髪が逃げる。
「俺が君のこと手放せなくなっちゃったら、どうするの?」
「〜〜っ」
近い。目が逸らせない。
水面のような瞳がゆらゆら揺れて、私をとらえている。
息をするのも忘れて魅入っていると、
「…なんてね」
黒羽さんがへらりと笑った。
も、もしかしてからかわれた?!
途端にかああ、と頬が熱くなる。
「もうっ!なんなの本当…!」
「あはは、ごめんね。あんまりかわいいから、つい」
「なぁ…っ!?」
もう、あまりかわいいだとかなんだとか言ってからかわないでほしい。
頬の熱を冷ますようにパタパタと手で仰ぐと、黒羽さんはくすりと笑って私の隣に腰掛けた。
「───じゃあ今日は、俺の知り合いのとある令嬢の物語をしようか」



