夢に堕ちて、3秒。




ひょい、と覗き込むと、頬に朱を差した黒羽さんと目が合った。

…照れてる。黒羽さんが。


ぽかんと口を開けて固まる私に、黒羽さんは「あ〜もう…」とこぼした。


そして、私の髪をあの白い手がするりと滑る。


「せっかく我慢してたのに…、そんなにかわいいことばっか、言わないで」

「なっ…か、かわ…!?」


かわいい?私が!?


突然のセリフにびっくりしてしまって、目がうろうろと泳ぐ。

どうしよう。絶対今、黒羽さんよりも顔が赤い。


そんな私の気持ちを知ってか知らずか、更に黒羽さんは距離を詰めてきた。

する、と彼の指先から長い黒髪が逃げる。


「俺が君のこと手放せなくなっちゃったら、どうするの?」

「〜〜っ」


近い。目が逸らせない。

水面のような瞳がゆらゆら揺れて、私をとらえている。


息をするのも忘れて魅入っていると、



「…なんてね」

黒羽さんがへらりと笑った。



も、もしかしてからかわれた?!

途端にかああ、と頬が熱くなる。


「もうっ!なんなの本当…!」

「あはは、ごめんね。あんまりかわいいから、つい」

「なぁ…っ!?」


もう、あまりかわいいだとかなんだとか言ってからかわないでほしい。


頬の熱を冷ますようにパタパタと手で仰ぐと、黒羽さんはくすりと笑って私の隣に腰掛けた。





「───じゃあ今日は、俺の知り合いのとある令嬢の物語をしようか」