夢に堕ちて、3秒。








黒羽さんいわく、ここは夢の中だから、私がしたいと望んだことが全てできるらしい。


たとえば、遊園地に行きたいだとか。
外国の観光地が見たいだとか。


黒羽さんは今までたくさんの人の夢を食べてきたから、記憶の中から再現できるらしい。


「更紗は、どこに行きたい?何が食べたい?なんでも言って」

甘い笑みをたたえる黒羽さんは、まるでなんでも願いを叶えてくれる魔法使いみたいだ。



だけど、私は──…


「私は…、何もいらない。どこにも行かなくてもいい。…黒羽さんが、隣にいるなら」



彼のシャツの裾を掴む。


黒羽さんはまたきょとんとした顔をした後、「…もう、」と顔を伏せた。



…もしかして、めんどくさい女だと思われた?
しまった、と慌てて裾を離す。


焦る気持ちのまま一歩二歩、と後ずさるけど、黒羽さんは一向に顔を伏せたままだ。


どうしよう、何も言ってくれない。
沈黙が痛くて、心臓がドキドキと音を立てる。

何か、弁明しなきゃ。


「あの、黒羽さ……」


指を伸ばしかけて、ふと気づく。


あれ?黒羽さん、もしかして……。



「黒羽さん」

「…!ちょ、」