突然の後ろからの声に驚いて、お箸を取り落としそうになる。
バクバクと鳴る心臓を押さえながら振り向くと、そこにはニコニコとした笑みを貼り付けた晶が立っていた。
片手には、数量限定の焼きそばパン。
購買で買ってきたんだろう。
「高槻くん!今ちょうど更紗の好きな人の話しててさ〜。あ、一緒にご飯食べる?」
「あ、綾羽…!」
一刻も早く会話を終わらせてほしい私とは裏腹に、綾羽は晶のためにと椅子を運んできた。
「あー、いいよいいよ、気にしないで。俺あっちで食べるし」
「えー?そう?残念」
綾羽はちぇー、と唇を尖らせながらも笑っていた。
一方で私は、気づかれないように胸を撫で下ろす。
「………」
「……あ、晶?」
そのまま向こうのグループに戻ってくれればいいのに、晶は私のことをずっと見つめたまま突っ立っている。
どこか嫌な予感を感じた時、晶の目がすぅ、と細められた。
「でも更紗の好きな人は気になるな。更紗、好きな人いたの?」
側から見れば、いつも通りのにこにこした晶だ。
だけど、わかる。彼の目は全然笑っていない。
「っ…」
何か言わなくちゃいけないのに、唇が縫われたように動かない。
大丈夫、今は隣に綾羽がいるんだから、何も言ってこないはず。
……わかっては、いるのに。
どれくらい沈黙が続いたのかわからない。体感数分、だけど本当は数秒かもしれない。
沈黙を破ったのは、綾羽の明るい声だった。
「まぁまぁ高槻くんにはあとで個人的に話せばいっか!2人は毎日一緒に帰ってるんだもんね?」
もしかして好きな人って高槻くん?!昨日の帰り道で何かあったとか!?
なんて、1人で盛り上がっている。
晶を好きなんて、冗談でも笑えない。
「はは……」なんて乾いた声を喉から絞り出せば、ばちりと晶と視線が絡む。
「あはは、俺はそうだったら嬉しいけどね」
ふわりと微笑まれて、居心地の悪い思いのまま、お弁当を口に突っ込んだ。



