夢に堕ちて、3秒。



「3〜2〜1〜0。時間切れ」

「えぇ……」


突然開始されたカウントダウンはあっという間に終わってしまう。

まぁたっぷり猶予をとられたって、正解がわかっていたとは思えないけど。


黒羽さんはまた妖しく微笑んで、1歩、2歩と歩み寄ってきた。



「正解は、ここが更紗の夢の中だからだよ」

「ゆ、夢…?」


予想斜め上の答えに、ぽかんと口を開ける。

確かに、これが夢ならこの水浸しの景色にも納得がいくけれど。


「そう、夢」

遂に睫毛が触れそうな距離まで近づいて、思わず顎を引く。
雫の瞳から、目が逸らせない。


「ここは夢で、そして…俺は、夢魔なんだ」


夢魔。

夢魔って、あの夢魔?人の夢の中に入り込んで、精気を奪うとかいう?



「…へ、変態だ……」

自分の腕で自身を抱きながら、思わず後ずさる。
ここが夢かどうかはさておき、自分のことを『夢魔』だなんて名乗る時点で確実に変な人だ。

ドン引きな私に、黒羽さんは「待って待って、何か勘違いしてる」と声を上げた。


「俺は人の精気を食べてるんじゃなくて、人の『悪夢』を食べて生きてるんだ。だからまぁ…夢魔というよりかはバク?に近い感じかな」

「悪夢…」


そのフレーズに、体が強張る。
ここ最近は特に、身近に感じる言葉だ。


「俺はね、更紗。君を助けに来たんだよ」