「なぁ」
不意に晶が声をかけてきて、私は一瞬だけ視線を晶に移す。
「なに?」
「なんで黙ってんの?なんか喋れよ」
「え…」
一瞬とはいえ、ばっちりかち合ってしまった視線。
途端に晶の瞳がすぅ、と細められて、形の良い薄い唇が釣り上がった。
…どうしよう。
心臓がどくどくと鳴る。
晶にとって私は都合のいいおもちゃなのかもしれないけど、その無茶振り1つが私にとっては大事件で。
震える口からはあ、とかう、とか言葉にならない声だけが零れ落ちた。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
頭の中が真っ白で、なにも浮かばない。
「え、っと……。じゃ、じゃあ、今日の数学の小テスト、どうだった?」
「小テスト?あー…」
考える素振りを見せる晶に、少しほっとする。
…よかった。とりあえず、会話が出来て。
「別に、普通に満点だけど。」
「そう、なんだ。やっぱり晶は流石だね。」
ぎこちない会話とは反対に、足を速める。
何もない今のうちに、早く帰りたい。



