リリカは止まった懐中時計の向こう側を見つめるように、淡々と言葉を紡いでいく。

「――私、まだ小さかった頃に、じぃじに構ってほしくてお客さんの時計に魔法をかけてしまって」

 勿論、ピゲも知らない話だ。

「でも私、まだ魔法の解き方がわからなくて、わんわん泣いてじぃじを困らせて……」

 リリカは今にも泣きだしそうな顔で続ける。

「そのお客さんが私に言ったんです。『君が一人前の魔女になった頃に、また直してもらいに来るよ』って……私、今の今まですっかり忘れてた」
「そのお客が、僕の先生だったわけか」
「え?」

 リリカが顔を上げると、彼は口元に手を当て、してやられたというような顔をしていた。
 そしてふっと優しく微笑んでリリカを見つめた。

「きっと先生は、僕と君を引き合わせたかったんだ」

 わけがわからないという顔でリリカが眉を寄せる。ピゲも一緒に首を傾げた。
 そんな中彼はひとりで「そうかそうか」とおかしそうに笑っていた。