「リリカ~、あいつがいると落ち着かないよ~。もうさっさと魔法使ってそれ直しちゃいなよ~」
「イ~ヤっ!」
「でもさ~、本当に夜までいられたらどうするの?」
「……流石にそれはないと思いたいけど」
「明日も、明後日も、ずーっと来るかもしれないよ?」
「う……」

 リリカが嫌そうに顔を歪める。

「それとオレ、あの人どこかで見た気がするんだ」
「どこで」
「それは、わからないけど……絶対、どこかで見たと思う」
「あれだけの顔、一度見たら忘れないと思うけど」

 それを聞いてピゲは少し意外に思った。

「リリカ、実はああいう顔が好みだったりする?」
「そういう意味じゃない! 昨日言ったでしょ。苦手なタイプだって」
「ふーん」
「はぁ。……紅茶くらいは入れたほうがいいかしらね」

 そう言いながらリリカは億劫そうにお湯を沸かしに行った。

 ――リリカの浮いた話をピゲは今まで聞いたことがない。人間の20歳なら恋人くらいいてもいいのに。でもリリカの恋人をピゲは全く想像できなかった。