可愛くないから、キミがいい【完】






「……むずむずするんですけど」

「なんか言ったか?聞こえなかった」

「何も言ってない」

「あっそ。てか、カステラ、あと一個ちょうだい」

「もう、あげないし。みゆのだもん」




横から伸びてきた和泉しゅうの手からカステラの入った紙袋を遠ざける。

不服そうな表情をしてきたから、可愛げなんてひとつも気にせず、舌をだしてやった。





和泉しゅうにはとられないように紙袋に手を忍ばせて、そっと、カステラは口に入れる。

何の気なしに見上げたら、和泉しゅうは私のことを目つき悪く見下ろしていた。



「あとであと一袋買ってやるから、くれって」

「……いやだ」

「お前より俺の方がカステラ好きな自信あるんですけど」



こつん、とわざとらしく肘をぶつけられる。

今のは、絶対に、さっき私が言ったことの真似だ。本当に、ムカつく。それなのに、どうしてなんだろう。


口の中にあるカステラが、やけに、甘ったるい。