可愛くないから、キミがいい【完】






山路君の姿が見えなくなって人気のないところで強引に立ち止まると、和泉しゅうは煩わしそうに私の方へ振り返って、わざとらしい溜息を吐く。

そのまま、向き直って顔をのぞき込んできた。




「なに?」

「なにって、こっちのセリフなんですけど。スタンプラリーしたいなら一人ですれば?」

「さすがに、よその学祭で張り切って一人でやんのは俺でも恥ずかしーわ」

「そんなの、みゆには関係ないし」

「広野」



名前を呼ばれて、反射的に見上げると、こつん、とからかうみたいにつま先を蹴られた。


和泉しゅうの右の口角がゆるやかにあがる。

そのまま挑発的に、三つ編みを引っ張るのだから、吃驚だ。

女の子の髪に容易く触れちゃいけないって前も言ってあげたのに、いけ好かない和泉しゅうのことだ。どうせすっかり忘れているのだろう。




「一緒にまわろって言ってんだけど、“天使”なお前はそんなに嫌なんすかね?」



首を傾げられる。

ギシ、と意味の分からない音が胸のところで鳴る。心臓が浮いたみたいで、一瞬とても居心地が悪かった。


背の高い男が、窮屈そうに首を傾げる姿って、むずむずする。相手は、和泉しゅうなのに、最悪だ。


回ってくださいって言ったらどう、と思う。

だって、本当に私はスタンプラリーには興味がないし、心の底から和泉しゅうと一緒にいたくないって思っているのだし。