「別に、みゆじゃなくていいじゃん。おモテになるんでしょ? そこらへんの女の子、ナンパすれば?」
「ナンパとかしたことねーし、無理。知らない女と回るよりはお前といたほうがいい」
「はあ?……別に私たちも仲良くないし。なに?もしかして、みゆのこと好きなの?それだったら笑っちゃうんですけど!」
「好きになってもらえると思ってんだったら、それこそ、笑うわ」
和泉しゅうが、ふっ、と鼻で笑ってくる。
ムカついて、腕を力一杯ひねったら、ようやく手首が解放された。
この期に及んで好きになってもらえるなんて思ってないし、もし好きになられたとしたら大迷惑だし、本当に笑うとかありえない。
思いっきり顔をしかめて、舌を出してやろうと思ったら、最悪なタイミングで着替えを終えた山路君が戻ってきた。
「なに、みゆちゃんと和泉、にらめっこ中?え、和泉、なんでこんな短時間で俺の推しと仲深めてんの、おい~!嫉妬しちゃう〜」
しかめる寸前だった顔を素早く天使に戻して、「違うよ~、もう」とはぐらかしたら、隣で吹き出す音が聞こえた。
見なくても分かる。和泉しゅうが笑ったのだ。
山路君が見ていない隙をねらって、足を踏んづけてやろうと思ったら、その前にまた手首を掴まれる。
は、と疑問符を音にしようとした刹那、「行くぞ」と共犯者に向けるような表情で目を細められて、そのまま引っ張られてしまった。
「え?なに、和泉」
「じゃーな、山路、接客がんばれよ」
山路君が遠ざかってゆく。
意味の分からない状況で、自由な方の手で一応山路君に可愛く手は振っておいた。



