可愛くないから、キミがいい【完】





ーーー「こいつ、和泉っていうの。で、こちらは、みゆちゃん。俺の推しでーす」



山路君がにかっと笑って、肩を抱いたのは、何度も二度と会わないって誓いを立てているはずの、和泉しゅうだった。




「どうも、和泉しゅうです」



白々しい挨拶をされる。
だから、やっぱりムカついてしまう。

こっちの事情なんてひとつもしらない山路君は、ひとりで楽しそうに笑っているけれど。



「……どうも、広野です」

「和泉、みゆちゃんめちゃくちゃ可愛いだろ?」

「お前がさっきからずっと話してた推しって、これ?」


これ、なんて言い方があるだろうか。


「そう!みゆちゃんだよ。最近、みゆちゃん別れたばっかなんだけど、お前狙うなよー」

「狙わねーよ、アホ」

「1階にミスターコンの写真貼ってあっただろ。あのうち、二人はみゆちゃんの元カレなんだよ。旭とあと田原だよな。なー?みゆちゃん」

「えー、へへ、そうだっけ? それ、みゆと山路君の秘密だったはずだよー?」



山路君、本当に黙ってほしい。

どうして人の過去の恋愛を、ずけずけと悪気なく話せるんだろう。私のことなのに、自分の武勇伝みたいに話しちゃってるのが、本当に無理だ。


聞かれたくない、そういう話は。

和泉しゅうには、特に、聞かれたくなかった。


和泉しゅうが目つきの悪い目を少し細めて、笑う。はは、って、何にも思っていないような笑い方。

ちらりと髪のあいだからのぞいている耳。今日は、リープロイのピアスはしていないみたいだ。




「つーか、このみゆちゃんのコスプレやっぱり可愛すぎるわ。いっつも天使みたいだけど、こういうのも似合うのが最高なんだよな。他校のお前には分かんないだろうけどー」

「わかんねーな。これが天使ね」



何か問題でもあるわけ?山路君に見つからないように、和泉しゅうをジロリと睨んだら、わざとらしく目をそらされた。