可愛くないから、キミがいい【完】









学校祭の当日、気分はあまりよくなかった。

どうしてかは、聞かないでほしい。




「えー、みゆちゃん、めちゃくちゃ可愛い!ギャップ萌え!え、付き合う?俺と付き合っちゃうか?どんなみゆちゃんも神」

「えー、ありがとう!気持ちだけでも、すごく嬉しい」

「いや、でも、みゆ、まじで私の想像通りだわ。それも似合うよ」

「もう。ミーナ、本当に思ってる?」

「うん。こういう路線に切り替えたら?それに、メイクもそれっぽくしてあるじゃん。実は、みゆも乗り気だったでしょ?」




ふふふ、とミーナが邪気なく笑っている。

心の中で、もくもくと黒い気持ちが浮かんでいったけれど、エヘヘ、と辛うじて笑っておいた。


前髪も入れ込んだゆるやかな三つ編みに、敢えて血色のないメイクをした。アイラインは長めで、いつもは使わない黒っぽいアイシャドーを使って、ブラックレッドの口紅で仕上げる。


白襟の黒いワンピースをきたら、もうそこに天使はいなかった。最悪だ。

それでも、中途半端なことはやりたくなかった。どうせやるならちゃんと再現したかった。

大好きな映画の女の子だからなおのこと。



だけど、こういう路線に切り替えるつもりは更々ないし、別にすごく乗り気だったわけではない。

私は、可愛いプリンセスのコスプレがやりたかったのだ。接客だって、その格好でイケメンにちやほやされることが目的だった。

この格好では、プリンセスにかなり劣る。


だけど、まあ、クラスメイトは「可愛い」を連呼してくれているし、「可愛い」の許容範囲にはギリギリはいっているのかもしれない。