可愛くないから、キミがいい【完】





「なに?」

「ママのことだけは、嫌な部分も愛しいって思えたんだよ。あ、今はもう、みゆもだよ?でもなんだろうね、例えば、他の人だったらどうしても許せないことでもママだったら許せちゃったりしたんだよ。許せるどころか、そういうのも愛しいって思ったんだよな」

「えー、パパ、重症じゃん」

「ははは、たぶん恋ってぜんぶ重症だからね。みゆは、重症になったことある? パパはできれば、ないって言ってほしいけど……」

「うーん、微妙なとこ。……てか、パパの言う他の人なら許せないことって例えばなに?」



パパが、目を細めて映画から視線をずらした。

質問をしたら、じっくりと考えてくれる自慢のパパだ。


付き合う男の条件はルックスのみで、性格は重視しないけど、パパみたいな男の子が現れたら、私は絶対に猛アタックをすると思う。だって本当に顔もかっこいいし、中年太りしてないしスタイルがいい。

結婚指輪でほかの女に威嚇してるのよ、って前にママがお茶目に言っていたけれど、その気持ちが分かるくらい、パパは会社でもモテると思う。




「なんだろうなあ」

「……口が悪いとか?」

「うーん、ママだったら、可愛い」

「……目つきが悪いとか?」

「ママだったら、いいよ」

「……絶対に言ってほしい言葉を言ってくれないとか、甘いものが好きすぎるとかは?」

「好きって言ってくれないのは困るかもな。でも、ママならいいよ。我慢する。甘いものは、パパは苦手だけど、ママは大好きだよね。というか、みゆ、さっきから全然許せちゃうことばっかりだよ」

「……みゆは、そういうの絶対に許せない」

「どうして?」

「……パパには分からないと思う」