可愛くないから、キミがいい【完】






何歳の頃だろうか。

おそらく、小学生の時だったと思う。たまたまパパと二人でお出かけしたとき、映画館でみた映画に私は、心を奪われてしまった。

それまで、思いやりがあって控えめで優しい女の人が幸せになるような所謂シンデレラのようなストーリーしか知らなかった私には、その時に見た映画は衝撃だったのだ。


麗しい美貌をもっているくせに、自分が第一で図々しくて、いつでも優しさを選ぶというよりも厳しさから自分を守ることを優先する、女の人の話だった。

天使を演じて、ルックスを最大限活かして、それで、最後には極上のイケメンと付き合うハッピーエンド。


決めぜりふは、『わたしが可愛いからこそ、この世界はまわっているのよ』だ。

言うタイミングも、言っているときの女優さんの表情も、完璧だった。


正直、今まで見たものの何よりも感動した。

小学生ながらに、あのとき私は泣いたと思う。


パパは、「みゆにはまだ早かったかもね」と言っていたけど、そんなことは、きっとなかった。

私はあのときの私なりの感性でちゃんとその映画を理解して、それで、それ以来、私の目標は、その女の人になったのだった。



シンデレラストーリーも好きだけど、それで浮かばれるのは一握りだ。できれば、嫌な目になんてあいたくないし、それならば、最初から天使を演じて、強かにいた方がマシだ。

それで、演じた天使のままに極上のイケメンを捕まえて、ハッピーエンドを迎える。

パパにもママにも誰にも内緒の計画だけど、十年以上、揺らいでいない。




「……パパー」

「うん?どうした、みゆ」

「パパって、なんでママと結婚したの?」

「えー、突然だね。なんだろうなあ」

「一目惚れで好きになった?」

「うーん、そうかもしれないし違うかもしれない。なんだろうな。なんで好きになったのかは忘れちゃったけど、結婚しようって思ったきっかけは覚えてるよ」