可愛くないから、キミがいい【完】






ちら、と恐る恐る隣を見上げたら、しっかりと目が合ってしまった。

相変わらず、嫌みなくらい格好いい顔だ。

もう、ときめいてなんてやらないけれど。



フラッシュバックする。

ほかの男の子の顔は忘れかけていたのに、どうしてこの男だけはしっかりと記憶に残ってしまっているんだろう。


一番忘れる努力をしたというのに、言われた言葉は当然のことで、身体を力強く押した感覚も、自分が叫んだ言葉も覚えている。



天使の表情なんて、絶対にあげない。

彼いわく、“白ける”らしいから。



ああ、本当に、ムカムカしてきてしまった。ぎゅっと唇をかんで、可愛さなんてひとつも考えずに睨んだら、煩わしそうに瞬きをされる。

それから、和泉しゅうは、少し目つきの悪い顔で、口角をあげた。




「悪かったな、ずっとあの溝にはさすがにいれねーわ」

「……へえ、残念。下水になったと思ったんですけど」



ふはっ、て吹き出される。


その笑い方がやっぱり気に食わない。

まわりには人がたくさんいるから、あんまり目立つことはできなくて、ムカつく気持ちは膨らむ一方だ。



「なに、お前。今日は俺に媚び売らねーんだ?」



はい、無理。すでに、無理だ。

ばれたらどうしよう、とかそんな不安の前に、和泉しゅうを前にすると苛立ちのほうが大きくなる。


無視をして、先に行ってしまったみんなに追いつくために、すたすたと一人で歩きだした。

和泉しゅうも、ついてくる。