可愛くないから、キミがいい【完】





「みゆ」

「……な、に」

「脱がしていい?」

「……いいよ」


小さく頷いて、腰を浮かす。

これまでありのままの自分を見せてきたからといって、じっと素肌を見られ触れられるのにはやっぱり独特の恥ずかしがある。

じっと、目を見つめられて、声をもらしたくなくて、唇を噛んだら、咎めるように、口づけをされた。食べられるようなキスをされて、泣きたくなる。

和泉しゅうにどんな風に自分が映っているのか。気になるけれど、分かったところで、どうにもできない。

彼は、余裕飄々としているわけではないけれど、理性の全てを破壊して、がむしゃらに触れることは、やはりないのだった。


「しゅ、う、っ、だめ、」

「ん。だめだな」

「まっ、て……、っ、」


今までの知識も経験もなんにも通用しなくて、ほんとうに、こまる。

可愛い、という言葉と態度以外のすべてをこの男から押し付けられている。うまいとか、へたとか、そんなことを考える余裕なんて、もうなかった。

視界が滲む。
その先に、好きなひとがいる。

いま、世界のどのへんにいるんだろう。なんて、もうおかしくなった頭で、馬鹿みたいなことを考えてしまう。


散々わたしに触れたあと、和泉しゅうは一度、ベッドの上からおりて、机の引き出しから何かを取り出して戻って来た。

さすがにそれが分からないほどではない。

雑に、ズボンとパンツを脱いで、私に背を向けた和泉しゅう。その少し猫背気味の背中をじっと見つめる。

尖った肩甲骨に、どきりとしてしまう。体力が落ちたとかなんとか言っていたけれど、結構ごついし、和泉しゅうの背中は綺麗だった。


「……みゆ、何もしてないのに、大丈夫なの?」

一応、声をかけたら、そのタイミングで“作業”が終わったのか、和泉しゅうはまた私を組みしいて、また触れる。


「お前がいちいち煽るから、全然」

二の腕の筋肉の盛り上がりに、なぜか見惚れてしまう。

もう、脳内はバグが起きて、恥ずかしさでさえ、いつの間にか、分解されてしまっていた。

でも、いいのだ。和泉しゅうなのだから。開き直ってしまえば、もう思い病むことはない。思い病む余裕がない、と言った方が正しいけれど。


「ん、っ、」

「……、大丈夫?」

「だい、じょうぶ」


何度か頷いて和泉しゅうに視線を向ける。

彼は、さっきよりも余裕のない表情で、私を見おろしていた。筋肉も血管もラインがくっきりとしている。力が入っているのだと分かった。

それが、興奮からきているものだと解釈できるくらいの経験値があって、よかったとぼんやり思った。



「……しゅ、う」

「ん?」

「……やっぱり、なんでもない」

悔しいけれど、ぜんぶ、好きで、仕方がない。