喧嘩になりそうな雰囲気のなかで甘えるみたいな言い方になってしまって恥ずかしくなっていたら、怒りに歪んでいたはずの彼の表情が、なぜか微妙に優しくなった。
「お前はどうなのか、知らねーけど、こっちは、好きだから、でしかない」
「…………、」
「だから、うぜぇものはうぜぇままだろうな」
「なに、それ」
「やっぱり、もう、まじで過去はいい……終わりな。今から、さすがに喧嘩するのはだるい。たぶん、これから付き合ってくうちに、お互いうぜぇのどうでもよくなるくらいヤることになると思うし」
「……みゆも、喧嘩はしたくないもん」
「うん、分かってる」
「………ちょっとだけ、ごめん」
「ん、俺も」
「………うん」
「お前が、目閉じたら再開するけど」
「え」
「みゆ、どうする?」
「……なにそれ」
「そのまんまの意味」
「………仕方ないから、閉じてあげても、いいけど」
わざと、ぎゅうっと力を入れて目を閉じる。
そうしたら、は、とクリアではないけれど柔らかい和泉しゅうの笑い声が傍で聞こえて、唇に熱がのった。
ゆっくりと瞼を押し上げる。
視線が絡まって、数秒、見つめ合ったあと、どちらからともなく目を伏せた。また、唇が重なる。今度は、少し荒っぽくて深い口づけだった。



