可愛くないから、キミがいい【完】




「和泉しゅう、眠たいの?」


なんだか気を紛らわせたくなって、適当に聞いてみたら、和泉しゅうは首を横に振り。


「まったく眠くない」

「……ふぅん」

「みゆは?」

「……みゆも、眠くないよ」

「あそ」


衣擦れの音がして、和泉しゅうの手が伸びてくる。

いたずらに私の前髪を撫でたかと思ったら、そのまま肌をなぞって、弱い力で耳朶を抓ってきた。

心臓が、とくん、と音を立てる。

明るすぎない部屋でよかった。今、和泉しゅうにどきどきしていることが、表情に完璧にあらわれてしまっているような気がする。



「……しゅう、なに」

「みゆ」

「だから、なに?」


ちょっとだけ睨んだら、耳朶を優しく引っ張られて吃驚した。和泉しゅうが、ゆっくりと唇を震わせる。


「したい?」


不透明な低音が鼓膜に触れて、和泉しゅうにときめいてしまいながらも、どうして私に聞くの、と責めるような気持ちが湧いてきた。

睨んだまま、「みゆに、そういうこと聞かないでよ」と文句を言う。

耳朶にはまだ、和泉しゅうの指先の熱が触れていて、じんわりと熱くなっていた。


「……あんたは?」

「したいにきまってるだろ。結構、我慢した」


即答されて、咄嗟には返事ができなかった。

和泉しゅうは、自分の発言にまったく照れた様子もなく、ただ瞬きを繰り返して私を見ているだけだった。

耳朶をつねっていた指で、顔の輪郭をなぞられる。

平然とした男の視線の温度だけが焦げるように熱い。和泉しゅうが、自分に欲情しているのだとはっきりと分かった。